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紅ノ蝶

紅ノ蝶

世界中の誰よりも


遠くでチャイムの音が聞こえる。
 


「………」



―下校時間になりました。校内にいる生徒は帰りましょう。―



下校の放送を聞きながら頭が覚醒してきた。



眠い目をこすりあくびをひとつする。



遠くから聞こえていたと思っていた音は頭の上から聞こえていた。



ポケットの中にあった携帯電話を手に取る。




『Eメール一件』



応接室に来て。
帰ろう。
早く来ないと咬み殺すから。



送信者はもちろん雲雀恭弥。



一応俺の恋人だったりする。



流石に咬み殺されたくないので急いで教室にカバンを取りに走った。















…早く会いたかったからというのももちろんあるけど。















*****

教室には誰も居らず、机の上にある荷物は俺のだけだった。



自分が片付けている音しか響いていない教室。



夕焼けの朱がとても鮮やかだ。



いけない。



ふと雲雀の顔が浮かび教室を出ようとドアを開けた瞬間。



「あれ、獄寺じゃん。」



「…山本。」



いちばん苦手なやつ、すなわち山本がドアの前に立っていた。



「オイ、野球バカ!そこ邪魔だ!どけ!!!」



「ははっ、邪魔なのは獄寺も同じだぜ?」



こいつ脳天気すぎる笑顔にイライラする。



こっちは急いでるのに。



「うるさい!俺は急いでんだ!話かけんな。」



「悪ぃな。それより俺聞きたいことがあるんだけど。」



「あとにしろ。」



相手にするのも面倒だったので、無視をして出ていこうと歩き出した。



「獄寺、俺に雲雀くれない?」



「はっ!?」










思ってもない事を言われ、歩き始めた足が反射的に止まった。










もちろん『雲雀』という単語に。










「なあ、いーだろ?」



「知らねーよ。なんでそんな事、お前に言わなきゃなんねーんだよ。」



―嫌だ!雲雀は俺の恋人だ!―




「俺、雲雀が好きなんだ。だから…」



―俺のだって…―




「俺にくれないか?」



―嫌―






「獄寺さ、いつも雲雀のこと『ウザイ』とか言ってるじゃん。」



―言ってるけど本気で思ったことは…一度も―






「なあ、獄寺?」






悪気のない笑顔で俺の顔を覗き込む。



口調はいつも通りだが、目が怖い。










…本気で言ってるんだ、コイツは。











「……だ。」



「ん?」



「嫌だ!ヒバリは俺のだ!!!お前になんかやらない!」



言われ放題だったから、お返しと言わんばかりの勢いで溜まっていたことばを吐き出す。



「…獄寺…。」



「十代目にもシャマルにも跳ね馬からも、もちろんお前にもヒバリはやらない!!!」



ピシャンと思いっきりドアを閉めて教室を後にした。





















*****

なんなんだアイツは!!!
  


いきなりヒバリを渡せだと!?



ありえない、ありえない、ありえない!!!



そんな事ばかりが頭の中で回っている。



自分の頭をくしゃくしゃにしながら、俺は廊下を走った。



「っ!?…いってぇ。」



ドンと大きな音がして俺はその場に座りこんでしまった。



人に、ぶつかったらしい。



「痛いのはこっちだよ。」



聞き覚えのある声に顔をあげる。



「ヒバリ…。」



コイツの顔を見たとたん泣きそうになった。



「廊下は走らないでよね。」



「………。」



「それと、早く来いって言っただろ。どれだけ待ったと……隼人?」



雲雀が言いかけた言葉を遮ったのは俺が抱きついたからだろう。



「ヒバリ………ヒバリ…………好きだ………好き……………。」



「隼人どうしたの?」



雲雀はぎゅっとカラダを抱きしめてくれた。



そして小さい子供をあやすように優しく頭を撫でてきた。



顔をあげ、じっと雲雀の目を見つめた。



漆黒の瞳に思わず見とれてしまった。



「ヒバリは俺のだよな?何処へも行かないよな?」



腰にあった手を顎に添える。



そのまま肯定とばかりに口付けをした。



「隼人。」



唇を離すと優しい声で俺の名前を呼んだ。



「なにがあったか知らないけど、僕が好きなのはこの世界でひとりだけだから。」



「うん、知ってる。」



「そう。それならいいけど。」



そしてまたふたりで軽いキスをしたんだ。



遠くでチャイムのなる音が聞こえたような気がした。

























そう。




















俺は好きなんだ




















コイツの事が




















世界中の誰よりも




















*****

―翌日―
 


太陽の下、屋上で山本武と雲雀恭弥はにらみあっていた。



正しくは雲雀だけが睨んでいたのだが。



「君でしょ、隼人になんかしたの。」



「ああ、ばれちゃいましたか。」



悪気のないような笑顔で山本は答えた。



その態度に雲雀はイライラを募らせた。



「当たり前でしょ。なに言ったか知らないけどもう僕たちの前に………何の真似?」



山本はフェンスに雲雀を追いやった。



そんな事には動じず雲雀はさっきより一層殺気を出した。



「俺のモノになってもらおうと思って。獄寺に頼んだら断られたんですよ。」



「隼人は僕にベタ惚れだからね。」



「っ!?」



腹に痛みを感じその場に座り込む山本。



「僕は隼人以外の人間を愛することなんてないから。」



「…容赦ないですね。」



「当たり前だろ。二度目はないからね。命は大切にしなよ。」



雲雀は座り込む山本をあとに屋上を後にした。

























そう

























僕が愛してるのは

























世界中で君ひとり






























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2008.6.27
何がぐだぐだになってスミマセン。
雲雀さんにベタボレな獄寺を書きたかったんです!!!
友達で8018好きって子がいたんで今回は8018で。
山本は常に片思いな気がします。
特にアゲハの書く小説だと。
山本ごめんね・・・。
嫌いなわけではないから。
ただ、略奪愛が似合う男だよ☆(えっ・・・。


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